賢く暮らす
インデックス→
親の財産が円滑に子供に移転、相続時精算課税制度
1 相続税と贈与税を比較すると…
  贈与税は相続税に比べると、税率がずっと高くなるというような話を聞いたことがある人は多いことでしょう。実際、贈与税と相続税で、税金の額がどれくらい違ってくるのか、みてみることにしましょう。

例として、Aさんが子供に1億円を贈与した場合と、Aさんが亡くなり子供が1億円を相続した場合で、税金がどれくらい異なるかを示すと、次のとおりです。計算を単純化するために、法定相続人は子供1人(配偶者も他の子供もいない)として計算しています。
ハト先生
   
Aさんが子供に1億円を贈与した場合
基礎控除後の課税価格
1億円−110万円
9,890万円 <注1>
贈与税額
9,890万円×50%−225万円
4,720万円 <注3>
Aさんが亡くなり子供が1億円を相続した場合
課税遺産総額
1億円−(5,000万円+1,000万円)
4,000万円 <注2>
相続税額
4,000万円×20%−200万円
600万円 <注3>
<注1> 贈与税の基礎控除は110万円。贈与で受け取った額から110万円を控除した額が課税対象額となる。
<注2> 相続税の基礎控除は「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」。このケースでは、法定相続人を1人として設定しているので、6,000万円となる。相続で受け取った額から、この6,000万円を控除した額が課税対象額となる。
<注3> 贈与税、相続税の税率速算表は次のとおり。
● 贈与税の税率(税率速算表) ● 相続税の税率(税率速算表)
(基礎控除後の)課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超〜300万円以下 15% 10万円
300万円超〜400万円以下 20% 25万円
400万円超〜600万円以下 30% 65万円
600万円超〜1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 50% 225万円
課税遺産総額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超〜3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超〜5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超〜1億円以下 30% 700万円
1億円超〜3億円以下 40% 1,700万円
3億円超 50% 4,700万円
   
贈与税額4,720万円に対して、相続税額は600万円。子供に同じ1億円を与える場合でも、贈与か相続かで、税金の額がまったく異なり、贈与した場合はいかに不利になるかがわかったと思います。
贈与をした場合、これだけ不利になってしまうと、結局、親は子供に贈与できなくなり、相続時になるまで親の財産を子供に移転させられないことになります。そのため、平成15年度税制改正で特例措置として、親の財産が子供に円滑に移転させられるように「相続時精算課税制度」が実施されました(特例措置の適用期限は平成19年12月31日まで)。
2 相続時精算課税制度
    相続時精算課税制度とは…
  「相続時精算課税制度」での税金の計算は、贈与時には軽減された贈与税を適用し、相続時に相続税で精算するという仕組みになっています。具体的には次のとおりです。
   
(1) 65歳以上の親から、20歳以上の子供の贈与について適用される。
(2) 選択制で、現行の贈与税制度に代えて、贈与時には軽減された贈与税を納付することができる(非課税枠を2,500万円とし、2,500万円を超える部分については一律20%で課税)。そして、相続時に相続税で精算される。
(3) 「住宅取得資金」の贈与で一定の要件を満たす場合には、2,500万円の非課税枠にさらに1,000万円が上乗せされ、非課税枠が3,500万円となる。この場合は65歳未満の親からの贈与でも適用される。
(4) 「住宅取得資金」の贈与での一定の要件とは、次の住宅用家屋の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭。
(a) 住宅用家屋の新築または建築後使用されたことのない住宅用家屋の取得。
(b) 既存住宅用家屋の取得。
・マンション等の耐火建築物は築後25年以内
・耐火建築物以外のものは築後20年以内
(c) 住宅用家屋の増改築・リフォーム
(増改築後の床面積50m2以上で、かつ、工事費用100万円以上のもの)
(d) 「住宅資金の贈与の特例」の適用を受けた場合には、その適用年分以後5年間は、「相続時精算課税制度」を選択できない。
   
したがって、Aさんが「相続時精算課税制度」の適用を受け、生前に子供に住宅取得資金1億円を贈与した場合の税金額は次のようになります。
   
  税金額 = (1億円−3,500万円)×20% = 1,300万円  
    そして、Aさんが亡くなり、相続になったとします。他に相続財産がなかった場合、相続税額は上で計算したように600万円で、700万円が還付されることになります。